短歌ヴァーサス 風媒社
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★短歌ヴァーサスは、11号で休刊になりました★
2004.8.2〜2006.6.30の期間(一時期、休載期間あり)、執筆されたバックナンバーをご紹介します

 
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島なおみ

 
La bergeronnette せきれい

 旅は好きですか?
 ボヘミアンな友だちが多い私の場合、彼らの旅立ちを見送った後にどうしようもない気持ちに駆られ、気がついたら車のハンドルを握っていた、というようなことは多々あります。ボロ車ですからナビはありません。地図だけ持ったひとり旅です。

 今日のテーマは旅と歌枕について書くはずでした。以前から手元に欲しいと思っていた佐藤りえさんの第一歌集「フラジャイル」に、「旅」の歌が入っているということを、風媒社のサイトhttp://www.fubaisha.com/tanka-vs/hihyou/fragile/index.htmlで知りました。おおまかな構成を終え、あとは1首引用するはずだった「フラジャイル」を読み通しプルーフすればそれでいい。2日後は原稿掲載日と差し迫った状況でしたが、軽い気持ちでN書店へ向かいました。N書店はいつもの場所にありましたが、「フラジャイル」がいつもの場所にはありません。少しだけ嫌な汗。
 その後、きのう今日と3日間、上袋(かみぶくろ)、藤の木、総曲輪(そうがわ)、本郷、有沢、速星(はやほし)、東岩瀬といった土地の書店の詩歌コーナーを訪ねて走りましたとも。最後の頼みは図書館と、呉羽山という小さな丘の麓にある県立図書館へ行ってきました。つい先週見かけたのです。鵯島(ひよどりじま)の橋を渡り、五福、そして峠茶屋とじりじり丘を登るのももどかしく、息せき切って重いガラスの戸を開け書棚の前に立ちましたが、どなたかが既に借りられたようで。

 きちんとプルーフできてないものを、ましてや一冊読み通してないものについて公の場で書くことが生理的にできないのです。だから引用したかったその1首が「新しい扉を叩け鶺鴒を空に放して地図だけ持って」だとか、どうして鶺鴒なんだろう、あの石を嘴でつつくかんじは扉をノックする感じだがそれとも…とか、鶺鴒という鳥にはどこか水の匂いがまといつくのだとか、セグロセキレイかキセキレイかとか、Bye bye! 風切り羽根を大切にね。擦れ違う車にもそんな気持ちで、イージューライダーを大声で歌いながらかっ飛ばす一人旅、などと心の中で準備していた言葉もすべて、泡と帰しましたが自業自得というものでしょう。

 +25 Easy Etudes, N゚11

 歌枕が入った好きな短歌を3首あげ、その優れた点を説明しなさい。本文中に登場した「掛尾」「上袋」「藤の木」「総曲輪」「本郷」「有沢」「速星」「呉羽山」「鵯島」「五福」「峠茶屋」から地名をひとつ選びそれを詠み込んだ短歌を1首つくりなさい。
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