短歌ヴァーサス 風媒社
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★短歌ヴァーサスは、11号で休刊になりました★
2004.8.2〜2006.6.30の期間(一時期、休載期間あり)、執筆されたバックナンバーをご紹介します

 
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伊勢谷小枝子

 
走らない

 足元を見ると「一回休み」と書いてあって、自分はすごろくのコマかよと思い、じだんだを踏んでいるのに「ダンスうまいねー」と言われる。病院に行って履いたスリッパは、前の人のぬくもりが残っていて、むーわむわ〜。診察で、白衣の人に「きれいだね」と言われたけど、ここは整形外科。形成外科ではなく。ほめられているのは、ヒザのお皿のレントゲン写真。自慢のしようがないではないか。いざとなったら猫でも噛む鼠になろうと構えていたけど、「いざ」って、なかなかない。獣の姿をしてくるようにとの指示があり、ヒョウ柄を着ていったのに、これはもしやキリン柄ではないかという疑念が持ちあがり、とりあえず野菜を食べてみる。そんな足元が噴火したらどうしよう。解けそうで解けないパズルをしながら余生を過ごしたかったのに。(人を守るとか、見守るとか、手を差し伸べるとか、できるのかな。)箱の封印を解くときは、自分で自分を許可したい。まばたきひとつのあいだに祈りや呪いが、ぐるぐる渦巻いてぐるぐる。そういう性格だと思っていたけど、ただのクセだといえばそんな気もする。「知らない人がこわい」と、Fさんが言っていた。知ってから嫌うなら嫌えばいい。そして知らないものに名前をつけよう。首から重いものをぶら下げておけば、「姿勢、良くしなさい」と言われずにすむかな。見ていないビデオやDVDがたくさんあって、ホコリが積もっていく。マクロミクロマクロミクロ。テクマクロミクマクロン。走るより歩くほうが、結果的には、早い/速い。てきとうに角を曲がって迷いたい。傷口の皮は、がんばっている毎日。生きられる。かも。

 みたいな「詩」とともに、北上市の「日本現代詩歌文学館」で催された「詩のゼミナール」第3回「自作を話し合う…(合評)」に行ってきました。
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