短歌ヴァーサス 風媒社
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★短歌ヴァーサスは、11号で休刊になりました★
2004.8.2〜2006.6.30の期間(一時期、休載期間あり)、執筆されたバックナンバーをご紹介します

 
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島なおみ

 
Le courant limpide 清らかな小川

 川をめぐる(草枕)旅が好きです。(若草の)夫と(かきそふ)二人連れで行きたくても(玉限る)現実は厳しく(かしのみの)ひとり(天彦の)訪れることが多いです。
(うちひさす)都から遠く(天離る)鄙の(しなさかる)越中・富山のわが(葦垣の)古アパートから車で1時間、さらに(たまほこの)山道を7、8時間歩くと(ぬばたまの)黒部川源流域の入口・薬師沢に達します。(ぬばたまの)黒部川とは北アルプスの(足引きの)峰を貫く南北86キロの一級河川です。多くの支沢を持ち、(ぬばたまの)黒部(百つたふ)八十八谷とも呼ばれます。清冽な水の(さにつらふ)色は無色透明、(久方の)ひかりそのもので(しきしまの)日本最後の秘境にふさわしい様相です。―とは言ってもハイシーズンは(葦鴨の)うち群れる登山者で(足引きの)山小屋は(あじさわふ)夜昼知らず賑やかですが―。
(ぬばたまの)黒部川は、明治政府が河川工事のため(ことさへく)オランダから招聘した技師が、(うばたまの)黒部川を見て「川ではない(石走る)滝だ」と言ったという逸話も持つほど水勢が強く(玉藻刈る)沖の方まで(粗金の)つちを削りながら700キロという(玉の緒の)長きを走る(鯨魚とり)海の底の部分は「富山深海(こもりくの)長谷」と呼ばれています。実際に(久方の)雨が大量に降る川に(まそかがみ)向かうと、(かりこもの)乱れた波が2、3メートルもある(真木柱)太い岩を(鳴る神の)音をたてて(天飛む)軽々と押し流し(朝露の)いのちも縮みます。まさに「(山川の)激つこころ」という表現がふさわしい。しかし(あがこころ)清澄な流れを保つにはこの激しさが浄化作用として必要なのだと、これはある(たまづさの)人の話です。

 ではこれにて今日は(天雲の)お別れです。(飛ぶ鳥の)明日もよい(新玉の)日でありますように。((雨衣)田簑の)島なおみでした。

 +25 Easy Etudes, N゚7

 あぢさゐの藍のつゆけき花ありぬぬばたまの夜あかねさす昼
                         佐藤佐太郎(『帰潮』より)

 barbaroとbarbaroとこそ囀くらしこの希臘人の耳に吾が言
                         高橋睦郎(『爾比麻久良』より)
 *ルビ:barbaro=バルバロ、囀=さへ、希臘人=へれねす、吾=あ、言=こと

 上記の歌を参考にして、枕詞が現代短歌に果たす役割を考えなさい。また、枕詞をつかった短歌を3首つくりなさい。
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