短歌ヴァーサス 風媒社
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★短歌ヴァーサスは、11号で休刊になりました★
2004.8.2〜2006.6.30の期間(一時期、休載期間あり)、執筆されたバックナンバーをご紹介します

 
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島なおみ

 
Progres 進歩

A.「わたしたちは進歩するサルです」
B.「わたしたちは進歩する貝割れ大根です」
C.「わたしたちは進歩するカーバイド・ランプです」
D.「わたしたちは進歩するφ(空集合)です」

 *

 ヒトではない物をヒトのように見立て直すレトリックを「擬人法」(personification)、ヒトをヒトではない物のように見立てる手法を「擬物法」(subjectification)といいます。無生物を生物に見立てる手法を活喩法、生物を無生物に見立てる手法を結晶法という分類もあるようです。

 擬人法・擬物法は日本では古くから使われ、8世紀に編纂された「古事記」には、旅立つ際に黒から青、青から赤の衣装へと、とっかえひっかえ着替える男を、胸の羽繕いをする水鳥に見立てた歌が登場します。

 ぬば玉の 黒き御衣(みけし)を まつぶさに 取り装(よそ)ひ 沖つ鳥 胸見る時 羽たたぎも これはふさはず 辺つ波 磯に脱ぎ棄(う)て そに鳥の 青き御衣を まつぶさに 取り装ひ 沖つ鳥 胸見る時 羽たたぎも こはふさはず…(長いので以下略。大国主命の歌とされる)

 現代のわれわれにも、水鳥のような男の仕草が実際に見えるようです。
 このようにヒトを鳥に見立てる修辞を、今わたしは誰の許しも得ずに「擬鳥法」(birdification)と勝手に名付けるものなのですが、上代より数ある擬鳥法の歌の中で最もきゅーんときたのは21世紀初頭に詠まれた以下の作品であることを告白しましょう。

 この次はハチドリとハチドリとして会いましょうせわしなく会いましょ

                         村上きわみ(「キマイラ」より)


(いますぐハチドリになりたい)




 +25 Easy Etudes, N゚6

 擬斉藤斎藤化(saito-saitify)という造語を定義したうえで、以下作品を説明しなさい。また擬人法、擬物法を用いた短歌を1首ずつつくりなさい。

 お名前何とおっしゃいましたっけと言われ斉藤としては斉藤とする
 おおくのひとがほほえんでいて斉藤をほめてくださる 斉藤にいる
                       斉藤斎藤(「渡辺のわたし」より)
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