短歌ヴァーサス 風媒社
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★短歌ヴァーサスは、11号で休刊になりました★
2004.8.2〜2006.6.30の期間(一時期、休載期間あり)、執筆されたバックナンバーをご紹介します

 
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Sin

 
えごころ

 『小鳥のさえずりは誰も理解しようとしないのに、
      絵になるとどうして皆理解したがるのだろう』 ピカソ

 せっかく川柳を始めたので、少しは文化人面しなければならないと思い、趣味の欄には「絵画鑑賞」というセレブな響きを書き綴るようにしている。ただ「スラムダンク」を読んでいるだけで、「絵画鑑賞」と呼べるかどうか私の立場では判断しかねないので、それこそ名画というものを観て肌で感じなければと、仕事などの出張の際には、公務員の天下りが館長を務めている、しかも景気対策による公共事業で建てられた、バブリーでゴージャスな美術館に出向き、赤字運営だというのに、とても安価な入場料で「名画鑑賞」というミッションを敢行できることに対し、私は日本の政治というものに、とても感謝している。それが、厚生年金の掛け金で建てられていようものなら、私はもう涙で「名画」が観られなくなってしまうので、選挙ではいつも自民党以外に投票するようにしている。

 本題はさておき、余談に戻ろう。
 いざ、鑑賞しようと思うのだが、未だ鑑賞の仕方がわからない。だからまず、絵画の鑑賞の前に、他の鑑賞者の行動をよく鑑賞しなければならない。その研究の甲斐あって、見事な鑑賞方法を手に入れた。
 まず遠くから絵全体を観て、2、3回うなづく。それから、ゆっくり絵に近づき、顔を何度か絵にくっつきそうな距離まで近づけたり、また離れたりしながら、独り言のように『あの辺がブラブラブラ』『ストロークがブラブラブラ』『鳥山明がブラブラ』などと、呪文みたいな事をいいながら、指でどこかを指せばいいわけだ。そして最後にまた遠くから眺め、『すごいね』と何がすごいかを全て理解しつつ、「もう君にはお手上げだよ」という苦笑いで締めくくれば完璧だ。誰も私を初心者だと思うまい、フッフッフ。さらにオプションで持っておきたいテクニックとして、他の鑑賞者に聞こえるように『もう何枚かゴッホが欲しいね』とヒルズ族を装ってみるのもなかなか趣があってオススメだ。
 ぜひ一度、みなさんも美術館で試して欲しい。

 『絵画や音楽は理解出来なくても「すごい」とか言えるくせに
      言葉になるとどうして皆理解したがるのだろう』 Sin
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