短歌ヴァーサス 風媒社
カレンダー 執筆者 リンク 各号の紹介 歌集案内

★短歌ヴァーサスは、11号で休刊になりました★
2004.8.2〜2006.6.30の期間(一時期、休載期間あり)、執筆されたバックナンバーをご紹介します

 
← 2005.7.19
2005.7.20
 
2005.7.21 →


佐藤りえ

 
飛ぶ夢を一度も見ない

 近所で新築工事が始まった。昼日中は窓を閉め切っていてもずっと騒々しい。そのせいかどうなのか、ここのところ寝が浅いような気がする。明け方近くにいくつも夢を見て、目覚めるとほとんど忘れている。かろうじて残った断片的な記憶(たとえば車が出てきたとか、雨が降っていたとか)は朝食を摂っているうちにだいたいどこかへいってしまう。
 それにしてもつまらないのは、自分が見る夢がほとんど現実をベースにしたものばかりだということだ。ファンタジーの登場人物のような異形のものも現れないし、超能力めいた行動をとることもない。もっと卑近(?)に、懐から取り出したお財布からおばあさんを出す、とかいうこともない。昔の職場でのほほんと伝票を書いていたり、せいぜい知らない家で走り回っていたりするぐらいである。平凡だ。なので、ひとの夢の話を聞くとうらやましさに身をよじりたくなることがままある。
 友人の夢には歌うぬいぐるみやピストルが登場したりするらしい。その独創的な、めくるめく世界に魅了される。いいなあ楽しめて、と思うが楽しい夢ばかりとも限らないのは誰にも共通することかもしれない。だから、ただひとつ希望を言えば、空を飛ぶ夢ぐらい見てみたいと思う。
 夢占いの本には必ずといっていいほどある項目、『空を飛ぶ夢』。これが積年の望みなんである。蒲田行進曲よろしく『階段の段がなくなって落ちた夢』は見た事があるがこれは飛んだとはいえない。地上10センチでもいいから、5分ぐらいでもいいから、ふわふわ浮く夢を見てみたい。というか、夢の中でぐらい現実離れした行動をしてみたいではないか。夢の中の自分が現実の自分とあまり変わらないのはなんだかがっかりである。
 しかし私は高所恐怖症なのだった。近年ますます磨きがかかり、ファッションビルの高層階から中庭を見下ろすのも恐ろしい。飛ぶ際は足で立てる範囲の高さでお願いしたい。ってこれは誰に頼めばいいのやら。
 そういえば、夢に見たいひとの写真を枕の下に敷いて寝るというおまじないは実際に効くのだろうか。体験談を聞いてみたいものである。ちなみに私はやったことないです。
← 2005.7.19
2005.7.20
 
2005.7.21 →