短歌ヴァーサス 風媒社
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★短歌ヴァーサスは、11号で休刊になりました★
2004.8.2〜2006.6.30の期間(一時期、休載期間あり)、執筆されたバックナンバーをご紹介します

 
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佐藤りえ

 
日記買ふ

 喉の奥のレンズ豆が貼り付いたような痛みがようやっと緩和されてきたと思ったらもう師走。残り一枚になってしまったカレンダーが心もとない年の瀬である。そのカレンダーと手帳を買うのが恒例の行事と言うか楽しみなのだけれど、手帳は旅先ですでに入手してしまったのだった。鎌倉のふいと入った雑貨屋で以前使っていたタイプの手帳を発見、即購入した。
 手帳に求めるポイントは大きく三つ。「コンパクト・マンスリー・頑丈」である。荷物の少ない女になろう運動展開中のため、やたら大きな日記帳タイプのものはかさばって仕方がない。本体と同じぐらいのボリュームのアドレス帳が付録になっていることもあるが、あれを毎年使いこなしている人もいるのだろうか。ずぼらな自分には到底無理そうだ。それをはずして値段を半分にして!と言いたい。長年の習慣から、月ごとの見開きカレンダーがあるものが好ましい。仕事の予定を週計算で入れたり、曜日を数えたりするのに、行形式の月間カレンダーはどうにも慣れない(あの、見開きカレンダーを手帳に設けているのは日本だけなのだろうか?)。六曜もあるにこしたことはない。何かを決める最終的なきっかけになったりすることがあるからだ(たとえば宝くじを買うかどうか等)。
 最大の着目点は頑丈さである。買った時には新品だった手帳が日を追うごとにぼろぼろになっていくのはいたたまれない。鞄をしょっちゅう持ち替えるので、出し入れをするたびにカバーがめくれあがったり、中に物がはさまったりする。夏を過ぎる頃には、使い込まれた、半年しかたっていないが充分年季の入った顔の帳面になってしまうのだ。
 来年度の獲物は表紙と裏表紙がそれぞれ厚紙で、カバーがない。PPカバーというやつも、コピーのインクがくっついたりしてやっかいものだ。裏表紙についたゴムがブックバンドの役割をして、勝手に中身が開いてだらしなく広がったりもしない。あまつさえ角が金具で丸く補強されている。なんなら凶器にもなりそうな頑健さだ。
 熱弁をふるう割には、白さの残る紙片の眩しさに目をしかめるのも年の瀬恒例の反省である。来るべき新年はくろぐろと有意義な予定で頁を埋め尽くしたいもんである。

  日記買ふ星の貧しき街なれば
             櫂未知子『蒙古斑』
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