短歌ヴァーサス 風媒社
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2004.8.2〜2006.6.30の期間(一時期、休載期間あり)、執筆されたバックナンバーをご紹介します

 
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若原光彦

 
作詞に挑戦

 6月下旬、数年ぶりに作詞に挑戦しました。作曲家hitoshiさんのサイト──

Senses-Circuit
http://www.senses-circuit.com/

──のイベント『MIX Senses Vol:1』に参加したのです。興味本位で課題曲を聴いてみたところ、1〜2フレーズが浮かんだので即座に書きとめ、字あまりを数え……気付けば本格的な作業に入っていました。数年前まで定型詩ばかり作ってましたし、もっと以前には作詞作曲をしていた時期もありました。自然と没頭していったのはそのためかもしれません(作詞作曲といっても、当時は和音すら知らず、旋律は鼻歌ばりのチープさで、詞も頑張れソングの亜流のよう。若気の至りでした)。

 成り行きでのめりこんだ6月の作詞ですが、進行とともに問題が噴出しました。ドラマもなければ詩的でもない。夜・羽根・光・旅といったありがちな言葉が収まっているだけ。音の畳みかけが無視されており曲と字数が合っていない。音色の印象と詞の母音も合っていない。聴者に解釈を委ねる形でツメを放棄してる。めちゃくちゃだ。
 改善にかかりましたが、一部を変えると全部のつじつまが狂い、サビだけが突出して浮き、連の飛躍は唐突、詞の主観までブレまくってくる。なんなんだこれは……。結局どうにか完成しましたが、詩作の数倍は面倒でした。作詞家って凄い。

 詞のために曲を修正して貰えるのなら、作詞をやれる人は多いでしょう。でもエンターテイメント業界は鉄火場です。そんな余裕があるとは限りません。歌手の個性や市場心理などを計算する必要もあります。特殊な技術と豊富な知識、なにより直感やセンスが要ります。考えることが多すぎる。人間技じゃない。
 私が考え過ぎなだけかもしれませんが、作詞家は「プロ」だと思い知りました。

 ぜひ一度「他人に聞かせる」ことを前提に作詞に挑戦してみて下さい。一種の極限を知ることになるでしょう。『MIX Senses』は年内にVol:2の開催が予定されています。hitoshiさんの曲はクオリティがすごく高いので作詞も気が抜けませんよ。楽しく厳しく、刺激的な体験になると思います。
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