短歌ヴァーサス 風媒社
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★短歌ヴァーサスは、11号で休刊になりました★
2004.8.2〜2006.6.30の期間(一時期、休載期間あり)、執筆されたバックナンバーをご紹介します

 
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三宅やよい

 
ぐさりとささった

 車止めの間を抜けて公園の坂道を下りる。黄落の並木沿いに、学生やフリーターがシートを広げ、彩色した丸っこい石や、針金で寄り合わせたアクセサリーを並べて売っている。
 隣り合わせに店を出すのも見かけほど気楽じゃなくて場所取りにも出品される品物にも水面下で神経戦が繰り広げられているかもしれないけど、平日の午後の陽だまりに店を広げている様子は羨ましいほど暢気に思える。
 細いジーパンに毛糸の帽子をかぶった男の子から絵葉書を買った。吉祥寺や国立駅の細いペンのスケッチに芸能人の似顔絵や動物を組み合わせたもので、グロテスクだけどなかなか見事な出来映え。肉筆で描いて色付けした作品の一部分をデジカメで撮ってパソコンで処理したらしく、見せてもらった原画は予想したより大きなもので全体の構成や質感が絵葉書とは全く違うのに驚いた。絵葉書は手をいっぱいに伸ばして見て収まりのいい構図がいいらしく、それに合わせ切り取った部分に更に手を加えているのだろう。原画にこだわらず目的に合わせて変化させる自在さは今の時代のものだ。昔は絵にせよ版画にせよ、部分で切り売りするなんて発想はなかったように思う。作品は自己表現と一体化したもので、画材屋や画廊に作品を売り込むことはあっても、いつか作品が評価されることに可憐な夢を繋いでいたのではないか。
 公園を歩く若者達はジーパンにレースのボレロ。ブラウスにざっくりと重いポンチョをまとってミュールを履いたり、古着と流行の服をとり混ぜて絵葉書同様実用的に自分の色を楽しんでいる。若者の出店にまじっておじさんが売っているぶ厚い油絵の風景画は一万円前後。地べたに並べて売るにはちょっとミスマッチに思えたけど、あぐらをかいて座っている姿は日向ぼこを楽しんでいるようでそれはそれでよかった。

  絨毯にキリンの色の日が溜まる  やよい
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