短歌ヴァーサス 風媒社
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★短歌ヴァーサスは、11号で休刊になりました★
2004.8.2〜2006.6.30の期間(一時期、休載期間あり)、執筆されたバックナンバーをご紹介します

 
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若原光彦

 
すっぱい大作戦

 若原光彦です。「やけっぱち」より「やけのやんぱち」が好きです。

 先月下旬、手軽なバックアップメディアとして、またネットカフェでの作業効率アップのために、USBメモリを購入しました。サイト構成ファイル・自作テキストなどを放り込み、レジストリ不要で動作するソフトも選んで入れました。それでも容量は4分の3以上余っている。ほわあ、安い買い物をしたなあ。
 と喜んだのもつかのま。問題に気づきました。『もしこれが他人に渡ったら、パスワードが知られアカウントが乗っ取られる!』。絶対に落としたり置き忘れたりしてはいけない。こりゃどうやって持ち歩けばいいんだ──

・オイルライターのケースに入れライターに偽装する
 ⇒火を点けようと蓋を開けばすぐばれる

・本をくりぬいて収める
 ⇒鞄の容積を占めるうえ、それは本としては読めない

・ガム・煙草などの空き箱に入れる
 ⇒間違えて捨ててしまいそうだ

・角型電池の中身を抜き、外装に埋め込む
 ⇒きれいに作るのは至難

・子供の頃に飛騨で買った「簡単には開けられないパズル木箱」に入れる
 ⇒自分でも開け方がわからない

・墨汁など不透明な液体の中に隠す
 ⇒たぶん壊れる

・楽器の中に隠す
 ⇒楽器を持ち歩いていない

──30ほど立案しましたがどれも非効率で不確実。ああ、スパイってすごいな……。おなかに四次元ポケットが欲しいな……。

 悩み、情報収集をする過程で、キーロガー等の問題にも気づきました。ネットカフェのPCがクリーンだとは言い切れない。重要なデータは持ち歩けず、持っていても使えない。
 結局、認証や個人情報に関わるファイルはUSBメモリから全て削除しました。ブックマークや創作データは『他人には無価値だろう』との希望的観測で残しましたが……それらも取得主が「他人の弱みは何でも面白い」と考える人間の場合、どう悪用されるかわかりません。おそらく泣き寝入り、良くても共倒れです。情報集積の怖さや問題を実感させられました。

 それにしても、消しゴム大の無機物1個に私の創作数年分が収まってしまうなんて。便利さと、寂しさと、自分の記録が魔石化したような愛着と……非常に複雑な思いがします。
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