短歌ヴァーサス 風媒社
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2004.8.2〜2006.6.30の期間(一時期、休載期間あり)、執筆されたバックナンバーをご紹介します

 
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増田 静

 
屋上にて(25)

 世田谷ボロ市に行った。ボロ市とは、俗に言うフリーマーケットだが、始まりは天正6年(1578年)、およそ400年の歴史を持つ世田谷の伝統行事だという。世田谷線世田谷駅から、代官屋敷のあるボロ市通りを中心に、露店が700近くも並ぶというから、これは行かねばなるまい。
 世田谷線で行くには乗り換えが必要なので、バスで行った。しかし、着いたと思う間もなく聞こえてくる、「蛍の光」。花火の音。そしてアナウンス、
「ただ今の花火で本日のボロ市は終了しました。すみやかに閉店して下さい」
 見渡すと、確かに閑散として、既にほとんどが店じまいをしている。生憎の雨で、通常9時までのところが急きょ7時で店じまいになったそう。すみやかに閉店とはやるせない。せっかく来たのに。
 悔しいので、翌日も出掛けた。翌日も雨だったが、夕方なので活気がある。傘を片手に、店をひやかして歩いた。骨董、古着、古本、サボテン、キムチと様々。威勢よく客を呼び込む店もあれば、寒いせいか、店主がこちらに背を向けた静かな店もある。呂律の回らない主人の片手にはワンカップ。何か叫んでいるが、何と言っているのかわからない。どの人の吐く息も白い。
 中華の露店でチャーシュー饅(150円)を買った。中の味噌が熱く、じわッと体が温まる。それから甘酒(100円)、続いて鰯げんこつ(300円)を買う。鰯げんこつは、長崎産の鰯をすりつぶし、野菜などといっしょに揚げた天ぷらで、白身魚に豆腐をブレンドした天ぷらとセットで割りばしに刺さっている。巨大で、重みがあり、しっかり支えないと割りばしが傾いてしまう。揚げたてだ。うまい。店のすぐ横で、はふはふ言いながら頬ばっていたら、いい客寄せになってしまった。道は小道をいけば植物ばかりを集めた通り、隣りには各地の物産を集めた通りが並び、目が泳いでしまう。行けども行けども飽きない。
 八百屋さんが塩だけで漬けた梅干しをワンパック(300円)と、温泉タオル12枚セット(12枚で100円)を買った。温泉タオルとは、新聞販売所が粗品でくれるような、薄くて白い普通のタオルで、そのときは興奮して買ったものの、しかし12枚も一体どうしようか。
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