短歌ヴァーサス 風媒社
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★短歌ヴァーサスは、11号で休刊になりました★
2004.8.2〜2006.6.30の期間(一時期、休載期間あり)、執筆されたバックナンバーをご紹介します

 
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斉藤斎藤

 
たいていの人が持ってます

 愛・地球博に行った。愛と地球を・でつなげるセンスはたまらなく昭和かと思うが、ものすごい人だった。市営の地下鉄を藤ヶ丘で降りるとリニモ乗り場は40分待ちで、行列がせまいところをうねうねうねらされていた。警備員が叫んでいる。
 「このペースで歩かれますと、確実に人身事故に発展します。どうか、どうかスピードを落としてください」
 傍目にはさほどのスピードとも思われなかったが、警備員の叫びには信仰に近い匂いがしたのでリニモはやめてシャトルバスに乗った。シャトルバスにはじめて乗ったのはつくば万博の行きで、二台のバスがアコーディオンみたいにつながってて、右折するとき必要以上にうねうねして笑えた。シャトルバス=うねうねするバス、だとそれから7年思い込んでたというおもしろ話をしてるとバスは緑のなかの真新しい有料道路を突き進んでて、バスのまわりもバスだらけで先が思いやられた。案の定バスターミナルはものすごい人で、蒸し暑い天気雨で日に焼けるわ濡れるわのなか行列はちょっとしたことですぐダマになり、ぼくは愛・地球博、と思った。
 そういえば愛・地球博って、愛知と掛かってるんですかね。いま気づいた。みなさんとっくに気づいてたですか。でもこういうことに迂闊な私をむしろ誇りに思いますがね。
 エスカレーターに乗るのにどうして15分も待たねばならないのか考えるうち15分は過ぎ、エスカレーターを降りるとだだっぴろいところを行列がうねうねうねうねうねらされていた。警備員がトラメガで叫んでいる。
 「入場券をお持ちでない方は左前方の当日券売り場に進んでください。チケットをお持ちでない方は、です。チケットはね、たいていの人が持ってます。」
(この項、つづく)
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