短歌ヴァーサス 風媒社
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2004.8.2〜2006.6.30の期間(一時期、休載期間あり)、執筆されたバックナンバーをご紹介します

 
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若原光彦

 
正夢の正夢

 今回はちょっとオカルトな話です。いつもに増して、いいかげんに読まれますよう。

 小学校低学年のある夜、私は夢を見ました──私は教室の自分の席についており、なんとなく黒板を眺めている。そして突然『あっ!』と驚く──それだけの夢でした。現実的で、なんてことはないワンシーン。
 それから数ヶ月後。教室の席で、私はボーッとしていました。そしてふと黒板を見て『あっ!』。驚きました。黒板に書かれていたことも、私が取っていた姿勢も、気温も、以前に見た夢と全く同じでした。そしてその驚き方まで夢と同じでした。
 と、これでこの話が終われば「はい、デジャヴュね」で済むのですが、そうもいきません。私は今でも年に2〜5回このような体験をしています。本を読んでいる時。人の話を聞いている時。PCを操作している時。駅の電光掲示板を見上げた時。ある時、とつぜん私の首の角度、着ている服の触覚、見えている景色、気温、体調、呼吸、全てが夢と一致して驚く。その驚き方までぴったり重なる。

・私は夢と現実が一致することがある
・その夢でも現実でも私は「正夢を見たことに驚いている」
・私は「正夢を見るという正夢」を見る?

 私の正夢はいつも「日常のひとコマで、私が驚く」だけです。事故を回避したとか、クジが当たったとか、そんな都合のいいシーンは一度もありませんでした。法則らしきものも今のところ発見できてません。あるときゃある、それだけです。何の役にも立ちません。何よ、これ。アカシックレコード? わからん。
 そうそう、いちばん滑稽だったのは「救急車で運ばれ、救急病院の手術室で蜂の巣みたいな形のライトを見た時」でした。『あっ』『ただの夢じゃなかったのか……これも正夢だったのか……』。手術終了後、手術台の上から看護婦さんに『昔この天井を夢で見ましたよ』そう言ってみましたが、変な顔されただけでした。
 夢で未来が見られても、それが実際に起きるまで正夢だと気づけないんじゃどうしようもないわねえ。まあ“人生の邪魔にならない予知能力”と考えれば、ましな気もしますが。なんでしょうねぇ。
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