物語終了ののち、二次会和民
劇場に行くちいさな愉しみは開演前、客席のお客さんを眺めまわしてしまうことだ。これから芝居がはじまるというわくわくのあまりどこまで舞台かわからなくなって、客席のお客さんがお客さん役の役者に見えてきて、B列4番と5番の会話のかみ合わなさは付き合ってまだ三週間だとか、ひとり客の役だからって文庫本を読みふけるのは芸がなさすぎだとか、お客さんのお客っぷりをああでもないと品定めするたのしみは映画館では味わえまい。ニナガワみたいなことしなくても、演劇は舞台をおのずとはみ出てゆくなまものなんじゃないかと思う。
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ポタライブの演劇は、待ち合わせではじまる。11月4日(土)13時、JR船橋駅改札。ポタライブのPをアレンジしたロゴをかかげた受付の男の子に二千円支払うと主宰、岸井大輔がおっとり話しかけてくる。 「きょうはどちらから。沿線ですね。じゃあ船橋は何度か。そうですか。これからするのはおさんぽですので、きょうはお天気もいいですしね。のんびりおつきあいいただければ。ご案内させていただくのは私なんですけどただもんだいが一つあって、私、役者じゃないんですよ。いつもは役者がご案内するんですけどわたし役者みたいに声出ませんから、ご説明するときはできるだけお近くでお聞きいただければと思います。それでは出発までしばらくお待ちのほど。」 作者との世間話は全てのお客さんにまんべんなくほどこされる。お客さんは他のお客さんと作者の世間話をそのへんで聞くともなく聞いていてるので、開演前にはお客さんどうしが顔見知りってほどではないかんじになったあたりでおさんぽがはじまる。 「船橋は、住みにくい街です(この項、つづく)
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