短歌ヴァーサス 風媒社
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2004.8.2〜2006.6.30の期間(一時期、休載期間あり)、執筆されたバックナンバーをご紹介します

 
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佐藤りえ

 
その後の肉球異聞

 ついにわがパソコンは「にくきゅう」を一発変換するまでになった。その後の調査で英語とフランス語では肉球という独立した単語はなく、足の総称は英語では「pad」、フランス語では「patte」という。踵にあたる部分もpadであり、ぷにっとした部分もpatteなのだ。また、日本語での正式な名称は蹠球(しょきゅう)と言い、「ネコ目(食肉目)の動物の足裏部に見られる、盛り上がった無毛の部分のこと。」(Wikipediaより)であるそうな。「肉球」は俗称らしい。前足後ろ足でそれぞれ違った名称もあるらしい。掌球とか。しかしやはり語源がはっきりしない。
 そんなこんなしているあいだに、おもしろい話を伺った。知己の仏文学者のそのまた知人の体験である。彼はフランスはポワチエに仕事で滞在していた。かの地においては、猫を飼うには役所に届け出て登録番号をもらい、をれを猫の右耳にタトウにしてつけなければならないのだという。都市部の猫はおおむね「完全家猫」で、窓から通りを眺める姿などは見かけたが、野良猫は皆無に近かったとのこと。もっとも郊外に出れば事情はまた別で、放し飼いの猫や野良猫も見かけたという。局地的な話ではあるが、日本の状況とはだいぶ違うようで興味深い。

「ちなみに、キャットフードは日本とずいぶんラインナップが異なり、魚を素材にしたものが極端にすくない一方で、さまざまな獣肉(boeuf poulet lapinなど)にいろいろな味付けをしたものが棚にずらりと並び、とても新鮮でした。(うちの猫はlapinのウェットフードがお気に入りでした。帰国してからこれが食べられなくなって悲しい思いをしているのではないでしょうか。。。)」

 boeufは牛、pouletは若鶏、lapinは兎のこと。「ねこまんま=かつぶし=魚類」はジャパニーズフーズなのだろうか?幼い頃祖母の家で飼っていた猫は、味噌汁かけご飯をはりはりと食べていたし、ほぐし焼き魚がトッピングされた日にはすすんでそこからたいらげていたものだけど。
 この話題を読んだ某さんは「肉球という概念がもし海外にないのなら輸出したい」とおっしゃった。同感です。まああるのかもしれないけど、そっと楽しんでいるのかもしれない。今後は言語力を強化して別大陸での猫の処遇について尋ねられるよう備えておきたいものである。前出のウィキペディアには「肉球を押すと、ぷにぷにとした独特の触感が感じられる。」という記述もあった。ほうら、やっぱり触るんじゃないですか。でしょう。触らずにはいられないでしょう?
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