短歌ヴァーサス 風媒社
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2004.8.2〜2006.6.30の期間(一時期、休載期間あり)、執筆されたバックナンバーをご紹介します

 
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荻原裕幸

 
超正論

 日曜、第4回歌葉新人賞の公開選考会があった。すでに歌葉サイトで発表された通り、受賞は笹井宏之さんの「数えてゆけば会えます」、次席に宇都宮敦さんの「ハロー・グッバイ・ハロー・ハロー」。すぐれた作品を顕彰できたという満足感と何か大切なものを見落としているのではないかという不安感がこもごもに襲って来ている。
 公開選考会の司会をつとめてくれた斉藤斎藤さんが、早速に月曜のこのコラムで、受賞と次席の順について、自分なら「笹井と迷った末に宇都宮敦を推したと思う」と書いていた。選考委員として、結果の逆順で推す意見には反論を掲げるべきかも知れないが、「笹井と迷った末に宇都宮敦」と、二篇の伯仲を理解してくれていた口ぶりに、むしろ穏やかな気分が訪れたりもしている。
 ところで、総合誌「短歌」11月号でも、第51回角川短歌賞が発表されたばかりである。併載の特集に「角川短歌賞受賞歌人による私の傾向と対策」とあって、思わず苦笑してしまった。たしかに各新人賞には傾向があり、対策もあると言えばあるのだろう。特集内容は、老舗の賞ゆえに受賞者=執筆者も豊 であり、連作の構成のノウハウや受賞歌人がその応募作をいかに努力工夫してまとめたのかを綴ったエッセイに満ちていて、興味深いものがいくつもある。
 ただ、傾向と対策をつきつめて考えると、結論は、おのずと香川ヒサさんがエッセイの末尾に書いている以下の超正論になってしまう気がするのだった。
「以上、角川短歌賞に応募した時、自分にとってもっとも現実的だった問題を語ってみたが、本当はそれらは何時どこで歌を作る時にも考えねばならないことなのである。賞に応募することでそれがわかったのだった。」(香川ヒサ「角川短歌賞に応募した時のこと」)
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