短歌ヴァーサス 風媒社
カレンダー 執筆者 リンク 各号の紹介 歌集案内

★短歌ヴァーサスは、11号で休刊になりました★
2004.8.2〜2006.6.30の期間(一時期、休載期間あり)、執筆されたバックナンバーをご紹介します

 
← 2006.2.5
2006.2.6
 
2006.2.7 →


黒瀬珂瀾

 
天使が見える

 結局、宮崎勤は誰がどう見ても、紛れもない凶悪犯罪者であることは変わりがない。2月2日には、被告側の判決訂正申し立ての棄却が発表され、名実ともに、宮崎勤の死刑は決定した。あとは法務大臣が執行命令書に署名するだけである。真宗大谷派門徒の杉浦正健法相がすぐに署名するかどうかはわからないけれど。
 たしかに、ある区切りはついたのだろう。しかし、それは事件にとっての区切りであって、オタクにとっての区切りとはなるまい。この17年を思い返してみても、沙織事件、有害コミック騒動、松文館事件、大谷昭宏によるフィギュア萌え族騒動……理不尽なオタクバッシングは数えきれない。さらに言えば『電車男』のヒットによるアキバブームも、それの表裏関係にあるだけで、非オタクからの好奇と侮蔑の眼差しを顕在化させただけにすぎない。例えばメイドカフェは単にオタク的祝祭感からスピンアウトした現象にすぎないのに、アキバといえばメイドカフェ、とまるで新手の産業のように安直に繰り返したマスコミの姿を軽薄と言わずに何といえばよいか。それは、「性的欲望に基づく女性の身体への視線」という、一般社会にとって分かりやすい消費衝動の構図にオタクを当てはめることで、オタク空間を一般社会空間の劣化版として眺望するためではなかったか。

 先だっては、宮崎勤の部屋に初めて踏みこんだという記者がその捏造報道の事実(その事実自体は大塚英志らの指摘などもあり、一部では知られていたが)を明言したブログを紹介した。しかし、まあいろいろと軋轢やら指導やらがあったのだろう、このエントリーはすぐに削除されてしまった。しかし、一度ネットに上げたものを隠滅出来るはずもなく、そのデータは完全な形でネットの各所に保管されている。検索すれば全文が直ぐに見つかる。結局、マスコミの不透明な体質を印象づけるだけに終ったようにも思えるのだが。
件の文章は次のように締めくくられている。

 ま、犯した犯罪からすれば、そのくらいは誤解されても仕方がないかもしれませんが、それでもやっぱり、事実とは違ったのです



 「誤解されても仕方がない」




 沙織事件
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B2%99%E7%B9%94%E4%BA%8B%E4%BB%B6
 有害コミック騒動
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%89%E5%AE%B3%E3%82%B3%E3%83%9F%E3%83%83%E3%82%AF%E9%A8%92%E5%8B%95
 http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20050406/1112804830
 松文館事件
 http://www.geocities.co.jp/AnimeComic-Tone/9018/shoubun-index.html
 http://www.medical-tribune.co.jp/ss/2004-6/ss0406-3.htm
 フィギュア萌え族
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E8%B0%B7%E6%98%AD%E5%AE%8F
 http://picnic.to/~ami/o_repo.htm
 http://www.geocities.jp/kotoba_mamoru/


← 2006.2.5
2006.2.6
 
2006.2.7 →