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そこにある光と傷と忘れもの

著者: 千葉聡 著

本体価格: \1,700(税別)
サイズ: 四六判上製 116頁
ISBN: 4-8331-2048-8
発行年月: 2003年12月刊

品切れ
 

■内容説明

「キス未遂 僕らは貨車に乗り込んで真夏が軋みだすのを聴いた」
「大切な言葉を削った代償に引き伸ばされる放課後の空」
「雪よりも白い空から空よりも明るい雪が降る 朝が来る」
気鋭の若手歌人・千葉聡待望の第2歌集。
 

■目次

光の断面・夏の眠り
  ウォータープルーフ
  靴麿と海を見に行く

僕(の一部)からの卒業
  誤作動マリア 無修正ヨセフ
  ノーカット

非実力派教師の日常
  これからの日々
  吹奏楽部 風雲録
  退部届
  放課後のスイッチ
  青空観察部 夏の特訓

アンサーソング
  夜の息 あるいは ミルク
  この部屋は明るすぎた
  影絵
  未完成ロマンス
  使徒たち
  忘れられた光
  手紙を待つ間に見た夢
  月へ行かない


文学の勝利(?) あとがきにかえて

■書評・紹介記事

「Grazia」2004年5月号 穂村弘氏評

「独特の世界を持つユーモアに溢れた短歌集」

『そこにある光と傷と忘れもの』とは美しいタイトルだ。
 よくみると「そこにある/ひかりときずと/わすれもの」という五七五の俳句形式になっている。そして中身に収められているのは、そこに七七をつけた五七五七七、すなわち短歌である。

 会えるとは思わなかった 夏が麻痺してゆく船の倉庫のかげで

「会えるとは思わなかった」誰かに思いがけずに会えたことで、〈私〉の「夏」は永遠に近づいたのだろう。目眩くふたりの時間のなかで「夏が麻痺してゆく」という感受が瑞々しい。

 びしょ濡れの鉛筆で書いた線のよう 寝ころんだまま空を蹴る脚

「びしょ濡れの鉛筆」では、思うような線は書けない。「寝ころんだまま空を」蹴っても、ただ藻掻くような手応えのなかにこそ、青春という一度きいの時間が息づいているのではないか。
 とはいえ、作者はもはや学生ではない。「非実力派教師の日常」という章題からもわかるように、新米の教師である。学校生活を歌った作品から引用してみる。

 「おはよう」に応えて「おう」と言うようになった生徒を「おう君」と呼ぶ
 「寒いよー」「朝だよー」「まだ眠いよー」生徒は言いに来るそのままを

 このような奇妙なユーモア感覚は本書の至る所にみることができる。

(後略)


「日本経済新聞」2004年5月16日 小池光氏評

「千葉聡、新しい教師の歌」

(前略)

 千葉聡歌集『そこにある光と傷と忘れもの』という歌集を読んだ。著者は三十五歳、中学で国語の教師になって三年目、とあとがきにある。

 私語それは痛みだ 僕に向けられていない言葉が僕を突き刺す

 歌集の多くの歌が教師としての場所から歌われているのに、既視感がないのはどうしてだろう。高いところから教え、導くといった感覚と発想がぜんぜんないからに違いない。授業中の私語は、なにより自分への無視として、痛みとして針のように刺さる。この感覚はナイーブで、純粋で、余計な思い入れを背中にしょっていない。わたしは、ことし高校教師三十年目の古ダヌキだが、千葉先生はいい先生であること、うけあう。
 
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