大事件
こどもの頃に繰り返し読んだ本は、忘れようとしても忘れられないもので、いまでも記憶にくっきり残っているけれど、繰り返し読んだなどというのは冊数で言えばほんのわずかで、大半は一回しか読んだことがなく、断片的な記憶しか残っていない。ある時期から(少年期に対して確実に「むかし」と感じはじめた時期から)、その断片的な記憶がやけに気になって、機会あるごとに調べては、見つかると、読み耽って懐かしさにひたったりしている。先月10日の「大作戦」であげたハル・クレメント『二十億の針』なんかもそうした一冊だった。 ここしばらく(と言うか、もう十年以上……)、探しているのにどうしても見つからないのは、たとえば以下のような物語。作者もタイトルもまるっきりおぼえていなくて、しかも記憶の断片にしてももうかなり歪んでしまっていると思うけど、誰かわかりますか? 三十日までしかないはずの小の月になぜか三十一日があって、翌月は二日からはじまった。その月の一日が誕生日である少年にとっては大事件だった。なのに周囲の友人も大人たちも、おかしなことが起きたと訴えても耳を貸そうとはしない。というのが物語の発端。 同じく一日が誕生日の少年たちだけはこの大事件に気づいていた。失われてしまった誕生日を取り戻すため、主人公の少年は、日付がとんでしまった秘密を探りあてる。どこかの組織によって日付変更線が操作されていたのだという。そこで少年たちは飛行機に類する乗り物で太平洋に出かけ、乗り物に取り付けたフックのようなものを日付変更線に直に引っ掛けて(!)、あっちへ動かしたりこっちへ動かしたりして、時間の流れを元に戻し、めでたく誕生日を迎えることになる。 見つかると、実は有名な本だったりするのかな……。
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