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哀惜1000人の青春
勤労学徒・死者の記録

著者: 佐藤明夫

本体価格: \2,000(税別)
サイズ: 四六判並製 288頁
ISBN: 4-8331-0525-X
発行年月: 2004年8月刊

品切れ
 

■内容説明

奪われし青春の墓碑銘――。全国で最多の死者を出した愛知県内の勤労学徒たちの理不尽な戦災死と、不当に負わされた労働の現実を、貴重な証言を掘り起こして描く鎮魂のドキュメント! 少年・少女たちの生命を奪い、傷つけた地域の戦争体制を告発する。
 

■目次

第一章 学徒動員初期の労働災害――一九四三年一月〜四四年十二月
     動員への地ならしとしての「勤労奉仕」
     最初の犠牲者
     通年(長期)動員の開始と労働災害(六月、七月)
     増加する労働災害――交通事故死も
     県外動員学徒の健康破壊
     さまざまな労働災害

第二章 東南海地震と学徒――一九四四年十二月七日
     戦災だった東南海地震
     三菱名古屋航空機製作所道徳工場
     安立電気・住友電気など
     中島飛行機半田製作所(山方工場)
     中島飛行機半田製作所(葭野工場)
     その他軍需工場
     行政の対応

第三章 工場爆撃の開始と学徒――一九四四年十二月
     空襲の開始と待避体制の変化
     三菱名古屋発動機製作所爆撃
     三菱名古屋航空機製作所爆撃
     十二月の労働災害

第四章 誤爆と学徒――一九四五年一月、二月
     空襲と動員の状況
     目標外の被害
     気まぐれ投弾が四十二人の生命奪う――市三高女の悲劇
     つづく労働災害死

第五章 名古屋市街地空襲と学徒――一九四五年三月〜五月
     空襲状況
     動員学徒の状況
     三月の学徒死亡者
     四月、五月の学徒死亡者

第六章 熱田空襲などと学徒――一九四五年六月
     六月の空襲状況と警報ミス
     愛知時計電機の学徒たち
     愛知航空機の学徒たち
     住友金属の学徒たち
     六月九日以外の死亡者
     県外に動員された愛知の学徒

第七章 半田空襲などと学徒――一九四五年七月
     七月の空襲と学徒の状況
     本土決戦と学徒義勇隊員の戦死
     中島飛行機への爆撃と学徒の死
     その他の学徒戦災死者

第八章 豊川空襲などと学徒――一九四五年八月
     豊川工廠爆撃の惨状とその理由
     大学・専門学校学徒の死
     男子中等学校学徒の死
     女子中等学校学徒の死 
     国民学校学徒の死
     その他戦災による学徒の死

第九章 埋もれた死者と学徒
     全国の学徒死者数
     愛知の学徒死者調査資料
     自宅戦災死亡者は学徒か?
     調査の留意点と課題
     まとめ

付表一〜四

■書評・紹介記事

「歴史地理教育」2005年2月1日
 学徒勤労動員は、大戦末期の1944年4月より「通年動員」の段階に到る。2004年はその60周年であった。この節目の年に、原爆以外では最多の1096人の学徒が死亡した、愛知県における学徒勤労動員中の死亡者の氏名、死亡時の状況などを本書は明らかにした。
 まず、勤労奉仕の段階から三菱重工業など軍需工場への爆撃、名古屋市街地空襲、熱田空襲、半田空襲、そして学徒452人を含む2500人以上が死亡した1945年8月7日の豊川海軍工廠の爆撃までを、時系列的に取り上げ、そのうえで学徒死亡者数に関する調査をまとめている。
 本書の特徴は、近年の米軍資料研究を踏まえ、工場爆撃、市街地空襲の詳細にも触れ、爆死が不可避であったのかどうかに迫ったこと、また、空襲による爆死だけでなく労災死にも迫ったことである。その綿密な検証により、愛知県下で1000人を超えた学徒死亡者の大半が、軍や軍需工場の指導者の責任に属する人為的な犠牲であることを指摘、告発している。精力的かつ地道で膨大な調査がこの本の土台にある。
 また、「一人の死を悼み、実感することが、戦争批判の原点だとして引用されている、死亡者の同級生や遺族、引率教員らの証言は、一つひとつは短いが胸をうつ。とくに「子供をどうしてくれた、子供を返して」と引率教員らに詰め寄る母親の言葉は胸に突き刺さった。半田空襲と戦争を記録する会、愛知県歴教協をリードしてきた佐藤さんの活動の蓄積と人柄が滲み出ている。
 本書は、子どもたちを戦場に送った時、どんな事態が生まれるのかをリアルに知らせ、「戦争のできる国家」になりつつある今日に、私たちが何をしなければならないかを問いかけてくる。また、研究史的には、学徒勤労動員の研究に、「学徒の死亡」という厳粛な事実から光を当て、新たな地平を開いた。全国的な調査・研究は、未だ課題である。本書を手本に、各地での掘りおこしが期待されているといえよう。

「朝日新聞」(夕刊)2004年8月18日
……丹念に手記や資料、学校史を調べた。遺族や同級生への聞き取りも進め、犠牲者の名を調べることに心血を注いだ。その数は、約800人とされていた犠牲者を大きく上回る1096人にのぼる。……犠牲者の約30人の名は今も不明だ。「まだ中間報告」。己に課した課題への真摯な姿に打たれる。

「中日新聞」(県内版)2004年8月14日
……佐藤さんは、日本史の教師だった二十年ほど前から学徒動員に関しての調査を開始。……「動員された学徒と同じ世代の若い中高生に読んでもらいたい。戦争時にはどんなことが起こったかを知ってほしい」と話している。……
 
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